
ここまでの記事で「動画配信プラットフォームとは?」から始まり、動画配信を行うためのシステムや機能、プラットフォームを利用した視聴可能になるまでの流れとその仕組みを解説しました。
各記事内でもいくつか専門用語は補足しましたが、それでも分かりづらいところもあったのではないでしょうか。
記事内容の理解をより深めるためにここまでのおさらいも兼ねてもう一度、動画配信に係る専門用語の整理と解説をしていきます。
1. 収益モデルの専門用語
課金型動画配信
動画コンテンツを有料配信することで視聴者が料金を支払うタイプの動画配信サービスを指します。
月額など一定の料金を支払うことで動画コンテンツを好きなだけ視聴できる「SVOD」、都度課金型で動画コンテンツやそのパッケージを期限付きで視聴できる「TVOD」、同じく都度課金型で無期限で動画コンテンツを視聴できる「EST」などに分類されます。
SVOD
Subscription Video on Demandの頭文字を取った略称で、日本語では定額制動画配信などと呼ばれます。
NetfrixやHuluのように、月額など一定の料金を支払うことで動画コンテンツを好きなだけ視聴できるサービスです。
TVOD
Transactional Video on Demandの頭文字を取った略称で、日本語ではレンタル型動画配信などと呼ばれます。
Amazon Prime VideoやTSUTAYA TVのように、視聴したい動画コンテンツに対してレンタル代として料金を支払うことで、指定された一定の期間のみ視聴できるサービスです。
EST
Electronic Sell Throughの頭文字を取った略称で、日本語では動画配信販売や視聴権販売型動画配信などと呼ばれます。
iTunesやGoogle Playのように、動画コンテンツを購入し端末にダウンロードすることで、動画コンテンツを繰り返し視聴できるサービスです。
動画広告
インターネット経由で配信される動画による広告を指し、大きくインストリーム広告とアウトストリーム広告に分類されます。
インストリーム広告は、オンデマンド配信または「ライブ配信」される動画コンテンツの任意の位置に挿入される動画CMを指し、動画配信サービスの収益化の手法のひとつとして利用されます。アウトストリーム広告は、Webページの記事中に動画CMを埋め込むインリード広告やバナー広告枠内に動画CMを表示するインバナー広告などを指します。
純広告
動画コンテンツを配信するメディアと広告主または広告代理店の間で、出稿期間や出稿量を決めて配信される広告を指します。
純広告のメリットとしては、メディア側が広告主を選定できることや料金も交渉しやすいことなどが挙げられます。
2. 機能と仕組みの専門用語
動画配信プラットフォーム
インターネットで動画コンテンツを配信するために使用されるシステムを指し、YouTubeのような主にコンシューマー向けの無料動画配信プラットフォームと法人向けの有料動画配信プラットフォームに分類されます。
無料動画配信プラットフォームは、ターゲットを特に指定せず拡散したい場合に利用されます。有料動画配信プラットフォームは、会員管理機能や決済連携機能を利用した有料課金動画配信やデジタル著作権管理された動画配信をしたい場合に広く利用されます。
コンテンツ管理
動画のアップロード、動画の「エンコード」や暗号化処理の状況の確認、配信可能な動画の一覧表示や配信設定、動画のプレビュー、「プレイヤータグ」の発行などの動画配信サービスの運営に必要な一連の機能または運用を指します。
エンコード
動画のサイズを圧縮したり、TVやインターネット上で視聴できる動画の仕様に変換を行う処理を指します。
エンコードは、動画を視聴者側に最適なファイルサイズと変換形式でお届けすること、配信側のコストやインフラ負荷を減らすことの両面から重要な意味合いを持ちます。
トランスコード
動画をデジタル信号のまま再「エンコード」する処理を指します。
広義には、「エンコード」と同じ意味で用いられます。
フレームレート
1秒間に何枚のフレームと呼ばれる画像のコマが使われているかを指します。
Frames Per Secondの頭文字を取ってfpsと表記されることもあり、例えば30fpsであれば、動画1秒間に30コマ含まれているという意味です。
動画は1秒間に数十枚もの画像を高速で切り替えながら、パラパラ漫画のように画像が動いて見えるよう表示するデータ処理をしているため、フレームレートが多くなれば映像はなめらかになりますが、その分ファイルサイズは大きくなります。
解像度
動画のフレームに含まれるピクセルと呼ばれる画素の数を指し、一般的に横×縦のピクセル数で表記されます。
8K(7,680×4,320)、4K(3,840×2,160)、Full HD(1,920×1,080)、HD(1,280×720)などの解像度が標準的に利用されますが、スクエア動画や縦長動画などの従来にはない縦横比率の動画も普及し始めています。
コーデック
動画に含まれる映像データや音声データの「エンコード」の方式を指し、それぞれ、映像コーデック、音声コーデックと呼ばれます。
代表的な映像コーデックには、MPEG-2、H.264/MPEG-4 AVC、H.265/MPEG-H HEVCなどがあり、音声コーデックには、AAC、MP3などがあります。
ビットレート
1秒間に送信されるデータ量を表し、Bits Per Secondの頭文字を取ってbpsと表記されることもあります。
ビットレートが高ければ高いほど画質や音質が向上しますが、その分ファイルサイズも大きくなります。
コンテナ
映像データや音声データをまとめて一つの動画ファイルに格納するための形式を指します。
代表的なコンテナには、MP4、MPEG-2 TS、FLVなどがあり、格納される映像データや音声データの「コーデック」、配信方式などに応じて決定または選択されます。
CDN
Content Delivery Network の頭文字を取った略称で、インターネット上のコンテンツデータを効率的かつ高いパフォーマンスで安定的な配信を実行するために開発された技術や仕組みを指します。
CDNを利用する大きなメリットとして、動画配信の安定化と高速化、サーバの負荷分散を実現できることが挙げられます。
オリジンサーバ
オリジナルの動画を保管しているサーバのことを指します。
動画配信を行うおおもとのサーバとなるため、オリジンサーバが稼働していることがサービス提供を行う上で大前提となります。
エッジサーバ
世界中に張り巡らされた専用のネットワーク上にあるサーバのことを指します。
「オリジンサーバ」からエッジサーバにキャッシュと呼ばれる一時的な保存データを作成することで、利用者や端末の近くに設置されたエッジサーバから動画を配信できるようになります。
DRM
Digital Rights Managementの頭文字を取った略称で、日本語ではデジタル著作権管理と呼ばれます。
動画コンテンツなどのデジタルコンテンツの著作権を保護するために、著作権者の意図しない利用を制限する技術や仕組みを指します。
DRMを用いることで、動画コンテンツの違法コピーを防ぐ、視聴回数に制限を設ける、一定の期間しか視聴できないように制限するなどの制御が可能となります。
暗号化配信
動画コンテンツの不正利用を防止するために、動画を暗号化し、再生時に暗号を解除しなければ視聴できないようにする仕組みを指します。
仮に動画をコピーしても、復号キーがなければ再生することはできません。
昨今の多くの動画配信サービスでは、HLS AES-128と呼ばれる暗号化配信が採用されています。
プレイヤータグ
PCやスマートフォン、タブレットなどの再生環境に合わせた最適な設定のメディアプレイヤーを自動的に表示するHTMLやJavaScriptのタグを指します。
多くの「動画配信プラットフォーム」では、プレイヤータグを設置するだけで簡単に動画配信が可能となります。
動画配信ログ
動画視聴ログとも呼ばれ、視聴者による動画コンテンツへのアクセスの記録やその統計レポートを指します。
再生開始数、完視聴数や離脱数、平均再生時間や総再生時間、同時配信数などと、時間帯、Webサイトのドメイン、地域、OSなどの組み合わせに基づき定量化される統計レポートは、マーケティングや動画コンテンツ制作の最適化などを目的とした視聴動向分析に利用されます。
API
Application Programming Interfaceの頭文字を取った略称で、プラットフォームが持つ機能を外部から手軽に利用できるようにする仕組みを指します。
APIを利用すれば、他のシステムとの連携も容易となります。
3. 配信方式の専門用語
ストリーミング配信
動画のデータをダウンロードしながら同時に再生する方式のことを指します。
全データのダウンロードを待たず、すぐに動画コンテンツを視聴することが可能となるため、インターネット上の「ライブ配信」にも利用されます。
オンデマンド配信
VOD配信と同義で、アーカイブ化された動画コンテンツを視聴者の再生リクエストに応じて「ストリーミング配信」する方式を指します。
「SVOD」や「TVOD」などの動画配信サービスの配信方式として広く普及しています。
ライブ配信
ライブイベントやスケジュールに従って編成された番組を「ストリーミング配信」する方式を指します。
「オンデマンド配信」と並び、アーティストのライブ、スポーツ中継、Webセミナーやオンライン授業、テレビ放送の同時配信などの配信方式として広く普及しています。
HLS
HTTP Live Streamingの頭文字を取った略称で、Appleにより開発された「ストリーミング配信」のための配信方式またはファイル形式を指します。
汎用的なWebサーバから「ストリーミング配信」できること、「オンデマンド配信」と「ライブ配信」の両方に対応していること、「暗号化配信」に対応していること、通信状況に応じて自動的に最適な品質の動画が選択される性質を持つこと、多くの端末やメディアプレイヤーと互換性があることなどの利便性から、配信方式の事実上の標準となっています。
4. 意味が分かれば専門用語も怖くない!

動画配信のみに係わらず、そもそも専門用語の意味を知らなかったために、説明を受けても理解し切れなかった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
かく言う私もその内のひとりで、機能や仕組みについて勉強していく中で、専門用語に対して何の知識を持ち合わせていなかったために、本来学びたいところまでなかなか辿りつかないという経験がありました。
今回、動画配信に係る専門用語を整理したことで、ここまでの記事をもう一度読み返してみると、最初よりも内容が分かりやすくなっているかもしれません。
整理した専門用語は、以下の記事から抜粋しています。お時間のあるときに、ぜひ読み返してみてはいかがでしょうか。
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