「テレビで動画視聴」が当たり前?(前編)

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動画といえば、パソコン・スマートフォンでの視聴を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、近年のインターネットの通信技術やさまざまなサービス提供企業による動画配信サービスの拡大に伴い、テレビで動画を楽しむことも珍しくない光景となってきました。

その背景の一つとして、Chromecast・Apple TV・Fire TVなどの直感的にストレスなく使えるコンシューマー向けのTVデバイスが流通したことが挙げられます。その結果、パソコン・スマートフォンと比べて何倍も大きな画面のテレビで、迫力ある動画をゆったり視聴するスタイルがより身近になっています。

既に動画配信サービスを提供している、または提供を検討している読者の皆さんの中にも「テレビでの動画視聴対応に興味はあるが手間がかかるのではないか」「そもそもテレビで動画を視聴できることを知らなかった」という方がいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、コンシューマー市場に流通しているTVデバイスの話を交えつつ、「テレビで動画視聴」の歴史や各分野での活用事例を前編・後編に分けて紹介します。

1. 「テレビで動画視聴」の歴史

コンシューマー向けのTVデバイスが流通する以前の2000年代、テレビで動画を視聴するためには、 通信事業者やCATV事業者などの大手インフラ企業が運営するビデオオンデマンドや多チャンネルの配信サービスと契約し、付属する専用受信デバイスを利用するスタイルが一般的でした。

その当時、動画配信の標準仕様が確立していなかったこともあり、配信方式や専用受信デバイスの仕様はサービスごとにまちまちでした。そのため、サービス提供企業は、場合によっては通信インフラも含め、配信システムと専用受信デバイスを自社で準備する必要があり、そのことが多くの企業にとって動画配信サービス参入への大きな壁となっていました。

2010年代に入り、パソコン・スマートフォン向けの配信方式として当時Appleによりドラフト仕様が公開されていた「HTTP Live Streaming」が急速に普及し、動画配信のデファクトスタンダードが確立されました。

2013年、そこに現れたのがGoogleのChromecast第1世代です。コンシューマー向けのTVデバイスとして「HTTP Live Streaming」に対応するChromecastの登場は、それまではパソコン・スマートフォン向けだった動画配信サービスが「テレビで動画視聴」に対応する大きなきっかけとなりました。

その後、2014年のAmazonのFire TV第1世代の登場や2015年のAppleのApple TV第4世代のアプリ対応などを経て、TVデバイスの市場は過熱していきました。

国際標準規格の配信方式「MPEG-DASH」やそれに対応するDRM技術の普及を背景にプレミアムコンテンツを配信する環境が整ったことで、2018年頃には、NetflixやHuluといった「テレビで動画視聴」に対応する動画配信サービスが数多くリリースされており、4K対応など映像品質の向上も手伝って、「テレビで動画視聴」はますます身近になってきました。

2. 近年のTVデバイス事情

ここ数年に発売されたTVデバイスは、従来の専用受信デバイスと比べて、スマートフォン・タブレットから映像と音声を転送する機能や軽快に操作できるリモコンを備えることで、利便性や操作性が格段に向上しています。また、動画配信の仕様の統一や市場競争の結果として、購入しやすい価格と販路が確立されています。

これらのTVデバイスへの対応には、iOSアプリ・AndroidアプリまたはHTML5など、スマートフォンやパソコン向けの開発ノウハウが活用できます。そのため、開発コストの削減や導入リードタイムの短縮が可能となり、結果として、ユーザーに対して新しい機能を素早く提供できるようになっています。

そんな近年のTVデバイスですが、その形状は主に二つのタイプに分類されます。

一方は、STBと呼ばれるボックス型のTVデバイスです。STBとは、Set-Top Boxの略称で、ブラウン管テレビが主流だった時代にテレビの上に置くことが一般的だったため、このような呼び方になりました。

もう一方は、スティック型のTVデバイスです。ボックス型よりもコンパクトでテレビに直接挿し込むタイプのため、場所を取らずに設置できます。近年では同様のサイズで丸みを帯びた形状のTVデバイスも普及しており、一括りにドングル型などと呼ばれる場合もあります。

3. 歴史や事情を知ると動画配信がより身近に感じられる

今では当たり前のように普及している動画配信サービスは、かつては企業にとってサービス参入の壁が大きく、ユーザーにとっても身近ではありませんでした。

しかし、技術の発展により、動画配信サービスへの参入は以前と比べると、より身近な検討対象になっていることは間違いありません。

また、動画配信の歴史や事情を知ることは、「今の技術であれば、こんなこともできるのではないか」など、動画配信の活用方法について改めて考えるきっかけになるのではないでしょうか。

次回の後編では、現在流通している代表的なTVデバイスとエンタメだけではない「テレビで動画視聴」の活用法を紹介します。

▼後編はこちら

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おむらいす

聞き慣れないカタカナやalphabetの専門用語に頭を悩ませながら働く中、ある日突然、ブログ運営を任命された編集長。
運営とあわせて絶賛業界勉強中、かつ業界に詳しくない人にも分かりやすいブログを目指して奮闘中。

2018年=入社。初の動画配信プラットフォーム業界入り。
2019年=少しずつ。専門用語や動画配信にかかわる機能や仕組みを覚え始める。
2020年=なんとか格好がつくようになる。"新米"編集長を卒業する。
2021年=動画配信プラットフォーム業界の人っぽくなる。

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