動画の不正利用を防ごう!今すぐわかるDRMの基礎知識

入門

動画配信を行う方の要望として、「動画を違法ダウンロードされたくない」「動画を勝手にアップロードされたくない」といった声を聞くことが多くあります。このような要望をお持ちの方であれば、「DRM」という言葉を耳にしたこともあるのではないでしょうか。

DRMは音楽や映像データの不正利用を防止するために、違法コピーを制限したり、コピーされたデータを再生できないよう制限する仕組みとして提供されています。

ただ、DRMについては専門的な知識や用語が出てくることから、聞いたことはあるものの正しく理解していない方も多いかもしれません。

今回は、「なぜDRMが必要とされるのか」「どんなときにDRMが使用されるのか」「コピー防止策として要求されるセキュリティレベルはどこまでか」などについて解説していきます。

1. DRMとは?

DRMとは、Digital Rights Managementの略称で、日本語では「デジタル著作権管理」と呼ばれています。これは動画・音声・電子書籍データなどを含むデジタルコンテンツの著作権を保護し、違法コピーや意図しない視聴再生を制限する技術の総称のことです。

DRMを用いることで、「デジタルコンテンツの違法コピーを防ぐ」「コンテンツの再生回数に制限を設ける」「一定の期間しか再生できないように制限する」などが可能となります。

DRMはデジタルコンテンツのデータを暗号化し、利用者や機器に付与された視聴権に基づいて復号キーへのアクセスを制御する方法が一般的です。暗号化の方法や強度はDRMを提供するサービスによって異なります。DRMを使用するには、デジタルコンテンツを暗号化するシステムと復号キーを利用してデジタルコンテンツを復号化するシステムが必要となります。

また、あえてDRMを使用せずに、様々なデバイスで再生や転送が可能なデジタルコンテンツのことを「DRMフリー」と呼ぶこともあります。例えばYouTubeなどの無料動画配信サービスがそれにあたります。

2. なぜDRMが必要となるのか

動画や音楽、電子書籍といったコンテンツのデジタル化が進み、デジタルコンテンツはスマートデバイスでも高音質・高画質で楽しめるようになりました。一方で新たな問題として挙げられるのが、違法コピーや意図しない視聴再生による著作権利の侵害行為です。

ユーザーにとっては、手軽にデジタルコンテンツを楽しむことができるため大きなメリットとも言えますが、コンテンツの作成者・提供者にとっては、承認していない違法なコピーデータが拡散してしまうリスクを抱えてしまいます。

特に近年ではインターネットが各家庭に普及したこともあり、コピーデータは容易に全世界に広まってしまいます。その対応策として、適切なデジタルコンテンツの著作権保護を行い、著作権者の意図した範囲にのみ公開することが必要なのです。

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3. どんなときにDRMが使用されるのか

DRMの使用が必要になるケースは大きく分けて以下の2つです。

著作権保護が必要なコンテンツの配信

テレビ番組、映画、スポーツコンテンツ、ミュージックビデオ、教育コンテンツ、楽曲、ラジオ、電子書籍などの著作権が重要となるコンテンツがこれに該当します。制作側と配信側間の契約で、DRM使用が必須となっている場合もあります。

機密情報を含むコンテンツの配信

主に企業において新製品情報や企業戦略情報、オリジナル技術などの機密情報を含む映像やドキュメントファイルなどのコンテンツとなります。

4. 各サービスにおけるDRMの種類

DRMはサービスやコンテンツの種類ごとに異なる技術・方式が用いられています。代表的なものをいくつか解説しましょう。

デジタル放送

普段、私たちがテレビで視聴しているデジタル放送にもDRMが用いられています。放送で用いられるDRMの仕組みは特に、「CAS(Conditional Access System=「限定受信システム」と呼ばれる契約をしたテレビのみが受信できる、放送管理を行うためのシステムのこと)」と呼ばれます。テレビやブルーレイレコーダーなどの放送受信機器に挿入されるB-CASカードに暗号キーが収納されており、視聴するにはコンテンツの暗号を解除する必要があります。

また、ブルーレイレコーダーやハードディスクに録画した番組をダビングする際に、「コピーワンス」や「ダビング10」など、コピーできる回数に上限を設けたルールが適用されます。

BSデジタル放送の有料放送やCSデジタル放送には「コピーワンス」が適用されています。コピーワンスとは、著作権保護のためにデジタル放送番組のDVDレコーダーやハードディスクなどへの録画を1回限りに制限する制御方式のことをいいます。コピーワンス方式では、ハードディスクに録画した番組をDVDなどに再録画すると、その番組はDVDに録画された後ハードディスクから消去されてしまいます。

2008年以降の地上デジタル放送は原則として「ダビング10」が採用されています。前述の「コピーワンス」から大幅に条件を緩和し、ハードディスクレコーダーやパソコンなどで録画したCSデジタル放送などの有料放送を除いたデジタル放送番組に対して、コピー9回と別のメディアへのムーブと呼ばれる移動1回を許可する録画制御方式をいいます。

市販・レンタル品のブルーレイやDVD

映画やドラマ、アニメなどのコンテンツが収録されている商用DVDには「CSS(Content Scrambling System)」と呼ばれるDRMが採用されています。

しかし、「CSS」の暗号を解くための暗号化キーがインターネット上に流出してしまい、実質的な効力は失われています。商用ブルーレイディスクについては、DVDの暗号化キー流出の失敗を教訓としたより強固な「AACS(Advanced Access Content System)」というDRMが搭載されていますが、こちらも「AACS」の暗号化キーがインターネット上に流出してしまい、現在、その効力は失われつつあります。そして最新のUltra HD ブルーレイについては、これに対応してさらに強固な「AACS2.0」が開発されました。

商用の音楽CD

商用の音楽CDを他のデジタルメディアにコピーする際に、バックアップなどの私的利用での目的に限り「1回だけ録音」ができるように規定された「SCMS(Serial Copy Management System)」というDRMの仕組みが使用されています。

しかし、民生用オーディオ機材を使用しない、近年主流であるパソコンを使用したCDのデータ取込みには適用されません。

楽曲ダウンロード

楽曲ダウンロードの黎明期では、MP3フォーマットは著作権保護の仕組みを持たないため無限にコピーを作成することが可能で、海賊版としてネット上で流通することが問題になりました。

1999年以降、SonyやMicrosoftのDRM技術が実用化して著作権保護の対策が一般的になりました。しかし現在では、利用者の利便性を考慮してDRMを用いない、あるいは部分的に制限を緩和したサービスが次々とリリースされており、「DRMフリー」の流れが定着しつつあります。

動画・音声ストリーミング配信

年々サービス利用者が増加している「Amazon Prime Video」「Hulu」「Netflix」といった映画やドラマなどを扱っている動画・音声ストリーミング配信サービスでは、強固なレベルの版権管理が必要なためDRMが施されています。

コンテンツ再生時に配信側から視聴者の再生端末側のシステムへ、DRMの復号キーの受け渡しをする仕組みが一般的となっており、高いレベルでのセキュリティが行われています。

これらのサービスの多くが事前にダウンロードしたコンテンツであれば、ネット環境がない場所でも視聴できるオフライン再生に対応しています。この場合はダウンロードされたコンテンツにDRM技術が施されています。

5. 動画配信で使用されているDRM技術

ここでは、一般的に動画配信と呼ばれているサービスで使用されている、基本的なDRM技術について解説します。

暗号化配信

動画そのものを暗号化し、再生時に暗号を解除しなければ視聴できないようにする仕組みです。仮に動画データをコピーしても復号キーがなければ、暗号化されているため再生することができません。

例えばiOS端末やAndroid 4以上の端末に動画配信する場合には、HLS(HTTP Live Streaming)方式に対応するAES-128が利用されます。

ワンタイムURL

動画データを呼び出すことができる有効なURLを一定期間だけ生成し、期間を過ぎたら無効にする方法です。

悪意ある視聴者が動画データを呼び出すURLを探し出してSNSなどで外部に拡散した場合でも、次回のアクセス時にはURLが変わってしまっているので動画の視聴やダウンロードができません。ただしURLが変更されるまでの一定期間内であれば、視聴やダウンロードはできてしまいます。

ドメイン制限

指定されたドメインのみでしか動画を視聴できなくする制限方法です。

IP制限

指定されたIP環境下のみでしか動画を視聴できないようにする制限方法です。主に企業内でのeラーニングや機密情報を含む動画配信時に利用されています。

6. 動画ストリーミング配信で使用されるDRM技術

ここでは、動画ストリーミング配信で使用されている主なDRM技術について解説します。

Widevine

Widevineとは、Googleと同じAlphabetを親会社に持つWidevine Technologies が提供しているDRMです。旧世代の端末に対応したClassicとGoogle Chrome/FireFox/Operaブラウザ、メインストリームのモバイル端末、多くのスマートTV、OTTデバイスで動作するModularの2つのバージョンがあります。

Widevineを使用することにより、Silverlightなどのプラグインが利用できないChromeブラウザやiOS・Androidアプリ内へのDRM配信を実現することができます。

PlayReady

PlayReadyは、Microsoftが開発したDRMです。古いブラウザではSilverlightで動作し、Internet Explorerの最新バージョンやMicrosoft EdgeではHTML5で動作します。

Windows Media Audio、AAC、Windows Media Video、H.264/MPEG-4 AVCなど様々な形式のコンテンツファイルに対応している事が特徴で、Xboxや多くのスマートTV、OTTデバイスでも使用されています。

FairPlay Streaming

AppleのQuickTimeマルチメディア技術に内蔵されたDRMで、iPod、iTunes、及びiTunes Storeなどによって使用されています。

DRMはライセンス費用を支払う場合が多く、実装にも特殊な技術を用いることから、一般的には使用に手間がかかります。しかし、エンターテイメント系コンテンツや機密情報を含むようなコンテンツなど、高度なセキュリティ対策が必要な場合には高い効果が期待できます。

自社で実装と運用を行うのが難しい場合には、動画配信プラットフォームにDRMが組み込まれている場合もありますので、検討してみるのも良いのではないでしょうか。

7. セキュリティと著作権保護への理解とDRMの利用を検討しましょう

今回ご紹介した内容を元に、セキュリティと著作権保護について正しく理解し、費用対効果も含めてDRMの利用を検討しましょう。

とはいえDRMについての知識がそれほど無い企業にとっては、検討作業そのもののハードルが非常に高いかもしれません。その場合には専門家である、動画配信プラットフォーム提供企業に相談してみることをおすすめします。

自社の意図した利用範囲で、適切なコンテンツを配信できるようになっていきましょう。

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