前編の記事では、「テレビで動画視聴」の歴史と近年のTVデバイス事情について紹介しました。
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今回は後編として、現在流通している代表的なTVデバイスとエンタメだけではない「テレビで動画視聴」の活用法を紹介します。
動画配信サービスを提供している、または提供を検討している方はもちろん、個人的にTVデバイスを利用している方にも、代表的なTVデバイスについてより詳しく知ってもらえればと思います。
1. 近年の代表的なTVデバイスとは
前編の記事で、近年のTVデバイスは購入しやすい価格と販路が確立されていることを伝えしました。その形状もボックス型・スティック型とあり、読者の皆さんも、一度はテレビCMなどで見たことがあるのではないでしょうか。
現在、コンシューマー市場に流通している代表的なTVデバイスの生い立ちと特長を、それぞれ紹介します。
Chromecast
Googleから、2013年にスティック型の第1世代が発売されました。その後、2015年には第2世代、2016年には4KとHDRに対応するChromecast Ultra、2018年には最新モデルの第3世代が発売されました。第2世代以降は全て丸みを帯びた形状となっています。
サービス面の特長
「テレビで動画配信」を長らく主導してきたこともあり、他のTVデバイスと比べて対応する動画配信サービスがより豊富なことが挙げられます。もちろん、Google特有のGoogle Play Movieにも対応しています。
機能面の特長
Google Homeとの連携による音声操作や使い慣れたスマートフォンやタブレットからの操作が可能です。また、パソコンのChromeブラウザのタブや画面全体をテレビにミラーリングするキャスト機能にも対応しています。
Apple TV
Appleから、2007年に第1世代が発売されました。ただし、現在のような動画配信サービスを楽しむ機能はなく、パソコンの写真や動画をテレビで見ることが主な使用方法でした。2010年に発売された第2世代は、Netflixなどの動画配信サービス、さらにはiPhoneやiPadと連携して動画を再生できるAirPlayにも対応しました。続いて2012年に第3世代、2015年にはアプリに対応する第4世代、2017年には4KとHDRに対応する最新モデルの第5世代が発売されました。Apple TVは、全てのモデルがボックス型で統一されています。
サービス面の特長
主な動画配信サービスや音楽配信サービスはもちろんのこと、Apple特有のiTunes StoreやApple Musicにも対応しています。2019年秋には、オリジナル番組を配信するApple TV+の登場も予定されています。
機能面の特長
AirPlayによるiPhone・iPadとの連携、そして音声アシスタントのSiriを搭載するSiri Remoteと呼ばれるリモコンが挙げられます。Siri Remoteは音声操作とタッチパッドによるスマートフォンのような操作性が好評のようです。
Fire TV
Amazonから、2014年にボックス型のFire TV第1世代、スティック型のFire TV Stick第1世代が発売されました。以降2015年~2018年にかけて1年ごとに、ボックス型とスティック型の次世代が順番に発売されました。現在ではボックス型、スティック型ともに4KとHDRに対応する第3世代が最新モデルとなりますが、今後はスティック型のみの販売となることが発表されています。具体的な数値は公表されていませんが、後発ながら現在最も売れているTVデバイスの一つであることは間違いありません。
サービス面の特長
Apple TV同様に主な動画配信サービスや音楽配信サービスはもちろん、Amazon特有のAmazon Prime Video・Amazon Prime Musicにも対応しています。また、Firefox・Silkなどのブラウザにも対応しているため、インターネットの閲覧にも利用できます。
機能面の特長
音声アシスタントのAlexaを搭載するリモコン、Amazon echoデバイスやスマートフォンのAlexaアプリとの連携による音声操作に対応しています。サービス提供企業の視点では、Fire TVに搭載されるFire OSがAndroidと高い互換性を持つことが、他のTVデバイスに対する優位性となります。既存のAndroidアプリを流用して比較的容易にFire TVアプリを作成できることは、サービス提供企業にとって大きなメリットです。最近では、コーディング不要でFire TVアプリを作成できるオンラインツールも登場しています。
2. エンタメだけではない「テレビで動画視聴」の活用法
「テレビで動画視聴」が利用されるのは、ドラマや映画などのエンタメ系ばかりではありません。近年では教育・デジタルサイネージ・高齢者福祉などの分野でもその活用や利用検討が進んでいます。
ここでは、各分野での「テレビで動画視聴」の活用や利用検討の状況を簡単に紹介します。
教育
教育の分野では、1990年代から通信衛星や専用回線を利用した遠隔授業が始まっていました。全国の校舎に設置されたモニターを通して有名講師の授業をリアルタイムに受けられるため、当時は画期的なサービスとして広く認知されました。
一方で、専用インフラや設備の導入と維持にはそれ相応のコストとノウハウが必要となるため、その導入は一部の大手企業に限定されていました。
しかし、近年ではインターネットの通信技術の発展やTVデバイスの普及により新規参入のハードルが下がったことで、同様のサービスに加えて付加価値となるタイムシフト視聴やビデオオンデマンド配信も合わせて導入する企業が増加しています。
デジタルサイネージ
店舗で顧客向けに新商品のプロモーション映像を表示するスクリーンや建物内の共有スペースに設置されるインフォメーションディスプレイなどのデジタルサイネージにも、従来のDVDなどのパッケージメディアを民生機器で再生する方式や高価な専用装置を利用する方式に加えて、テレビとTVデバイスを組み合わせて動画配信する方式が登場しています。
この方式により、多数のデジタルサイネージを複数拠点へ導入する場合のコストや、各拠点での広告動画の更新や装置のメンテナンスなどの運用にかかる手間の削減が可能になりました。
現状では、拠点数が少ない場合にはコストメリットが出しにくいなどの課題はありますが、少数拠点をターゲットとしたデジタルサイネージソリューションが普及すれば、より多くの場所でこの方式が活用されるようになるでしょう。
高齢者福祉
高齢化社会を背景に慢性的な人手不足が課題となっている高齢者福祉の分野でも、動画配信の活用が検討され始めています。
パソコン・スマートフォン・タブレットは高齢者にとって操作が難しく画面が見づらいことが大きな障壁となります。しかし、デイケアやデイサービスの施設内にある大画面テレビを利用して、高齢者向けのリハビリ体操の指導や脳を活性化するためのクイズ、お笑いなどのレクリエーションコンテンツを映し出して皆で楽しむことで、それらの課題を解決しつつ職員の負担を軽減し、施設ごとのサービスの格差を抑制しようという試みです。
このような試みはまだ始まったばかりで当面は試行錯誤が続くと予想されますが、今後より一層の普及が見込まれる動画配信やテレビでの動画視聴が、この例に限らず、社会的な意義を持って有効に活用される場面が増えてくることは間違いないでしょう。
3. 「テレビで動画視聴」は意外と容易!
TVデバイスの進化により、接続手順がテレビ画面に表示されるなど、テレビとの接続設定もどんどん簡略化されてきています。
実際にテレビで動画を視聴している家庭では、みんなで見られることや従来のテレビ番組と同じように気軽に楽しめることなどをメリットとして実感されているようです。ちなみに私も、家族とテレビで動画視聴を楽しんでいる一人です。
TVデバイス向けアプリの開発環境が整備され、動画の配信方式もスマートフォンやパソコンと共通化されている近年、もし、まだ「テレビで動画視聴」に対応していないのであれば、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
既に動画配信をしているのであれば、容易にテレビを再生デバイスのラインナップに追加できるので、専門家である動画配信プラットフォーム提供企業に相談してみるのも良いですね。