完全図解!これを読むだけでわかる動画配信の流れ

入門

無料有料問わず動画配信サービスの利用やオンラインイベントの開催増加に伴い、企業もビジネスに動画を活用するケースが増えてきました。読者である皆さんの中にも、動画コンテンツの運用に携わっている方がいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな方に知っておいてほしいのが、「動画配信の流れ」です。動画ファイルをアップロードしてから視聴者の元に届くまでの間にどういった処理がされているのかを知ることで、動画配信システムを利用した動画コンテンツの適切な運用が行えるようになると思います。

有料の法人向け動画配信プラットフォームでは、システムに詳しく無い方でも扱いやすいように、以下のような動画配信の運営に必要な一連の機能を備えた管理システムを設けているのが一般的です。

・動画のアップロード
・動画コンテンツの配信設定
・動画コンテンツの登録処理状況の確認
・動画コンテンツの管理
・動画コンテンツのプレビュー確認
・プレイヤータグの取得
・動画配信ログの収集と解析

今回は動画配信の仕組みをご理解いただくため、動画配信プラットフォームを利用した流れを図に沿って解説します。

1. 動画配信管理システムへ動画ファイルをアップロード

配信を行うための動画ファイルを用意したら、まずは手元のPC端末から動画配信管理システムにアップロードすることから始まります。アップロードする際に注意しておきたいのが、動画のファイルサイズとファイル形式です。

ファイルサイズ

ファイルサイズは、動画の長さと画質によって変化します。ファイルサイズが大きいとアップロードに時間がかかってしまったり、そもそもアップロードできなかったりすることがあるため注意しましょう。

アップロードする動画ファイルのサイズの目安としては、最大でも1〜2GB程度に抑えることがおすすめです。大幅に超えてしまっている場合には、動画編集ソフトなどを使って、あらかじめ圧縮する必要があります。

ファイル形式

アップロードできる動画のファイル形式は、動画配信管理システムごとに異なります。配信を予定しているお手持ちの動画ファイル形式がそのプラットフォームで利用可能かどうか、あらかじめ調べておきましょう。

以下は代表的な動画のファイル形式で、多くの動画配信管理システムで利用ができます。中でも、一番多く利用されているファイル形式はmp4となります。

・mp4
・wmv
・flv
・avi
・mov
・mpeg
・mpg

2. 動画ファイルのエンコード

エンコードとは、動画ファイルを一定の規則に従って、圧縮や暗号化を含む目的に応じた別の形式データに置き換えて保存することです。

動画ファイルは映像と音声から構成されており、動画ファイルにおけるエンコードとは「映像データと音声データを圧縮し、いろいろな端末から視聴が可能な動画形式に変換する処理のこと」を指します。インターネット上で動画を配信する際は、「動画の容量を圧縮する」「視聴可能な動画形式に変換する」といった用途でのエンコードが必要となります。

動画ファイルをエンコードする際のデータ方式は動画コーデックと呼ばれ、以下のような種類が存在します。

・MPEG-4
・MPEG-2
・H.264/MPEG-4 AVC
・H.265/MPEG-H HEVC
・VP9

動画ファイルのエンコードは、変換する動画の画質やピクセル数を決められるサービスもあります。画質が高ければ高いほどエンコード後の動画ファイルサイズは大きくなり、画質を低くすることで動画ファイルを小さくすることが可能です。

画質を重視するエンタメ系コンテンツやスポーツのように動きが速い動画については高画質の方が適していますが、eラーニングのように動きがさほど大きくない動画については、画質を抑えてエンコードするケースも多くあります。短い動画やファイルサイズが非常に軽い動画の場合などでは、エンコードが不要な場合もあります。

動画配信プラットフォームでは、アップロードするのと同時にエンコードも自動で行なってくれるサービスが多いため、利便性が非常に高いです。

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3. 暗号化やDRMを利用した動画配信

動画配信を行うにあたり「動画をダウンロードされたくない」、「動画を勝手に利用されたくない」といった声を聞くことが多くあります。その対策として有効な技術が、暗号化配信やDRMを利用した動画配信です。

DRMとは、Digital Rights Management の略称で、日本語では「デジタル著作権管理」と呼ばれています。動画・音声・電子書籍データなどを含むデジタルコンテンツの著作権を保護し、違法コピーや意図しない配信を制限する技術の総称を指します。

DRMを用いることで、「コンテンツの違法コピーを防ぐ」「コンテンツの再生回数に制限を設ける」「一定期間しか再生が出来ないように制限する」などが可能となります。

DRMはデジタルコンテンツのデータを暗号化し、暗号化キーと復号キーという2つの鍵を組み合わせて利用する方法が一般的です。暗号化の方法や鍵の組み合わせ方、暗号の強度は、DRMを提供するサービスによって異なります。

DRMを利用するにはDRMをコンテンツファイルに付与して暗号化するシステムと、その暗号を解いて復号するためのシステムが必要となります。DRMは技術の向上や新しく登場するデバイスにも対応し、年々進化を遂げていると言えます。

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4. プレイヤータグの設置

動画ファイルのアップロードとエンコードが完了したら、Webサイト内にプレイヤータグを設置します。プレイヤータグとは、HTMLのタグなどを用いて動画情報を呼び出すことで、Webサイト上で動画を再生できるようにするものです。多くの動画配信プラットフォームでは、このプレイヤータグを設置するだけで簡単に動画配信が可能になります。

視聴者がパソコンやスマートフォン、タブレットのブラウザやアプリなどを通じて、プレイヤータグが設置されたWebサイトにアクセスすることでプレイヤーが表示されます。

5. CDNを利用した動画配信

プレイヤーの再生ボタンが押されると、CDNへデータ取得のリクエストが送られることで動画配信が開始され、視聴者の元に届きます。

動画はテキストや画像と比べてファイルサイズが非常に大きく、一度に大量の再生リクエストを処理しようとするとサーバーへの負荷が急激に高まるという特徴があるため、動画コンテンツの配信にはCDNが利用されることが一般的です。

CDNとはContent Delivery Network の頭文字を取った略称で、効率的かつ高いパフォーマンスで安定的にコンテンツ配信を実行するために開発された技術や仕組みのことを指します。インターネットが流行りだした1990年代後半ごろには既に存在していました。

CDNを利用せず動画配信を行う場合、オリジンサーバーと呼ばれる動画をアップロードしたサーバーに配信用ファイルを格納し、再生リクエストがあるとそのオリジンサーバーだけで配信を行います。

これに対してCDNを利用した配信ではオリジンサーバーだけではなく、世界中に張り巡らされた専用のネットワークを通じて、再生リクエストを行った視聴者からなるべく近い拠点のエッジサーバーと呼ばれるサーバーから配信を行います。

【補足情報】
CDNを利用する大きなメリットとして、動画配信の安定化と高速化、サーバーの負荷分散を実現できる点が挙げられますが、具体的にCDNを利用するとどんな課題を解決できるのでしょうか。

アクセス集中と混雑問題を解決

CDNを利用した配信を行うことで、オリジンサーバーからエッジサーバーにコンテンツのキャッシュと呼ばれる一時的な保存データが作成されオリジンサーバーが負荷分散されることにより、効率良く動画配信を行うことが可能になります。

距離問題の解決

視聴者と動画が配置されているサーバの物理的な距離が遠ければ遠いほど、データを読み込む時間が増加してしまいます。

CDN は日本、シンガポール、香港といったアジア圏の中だけではなく、世界的に分散配置されたサーバ群の中にコンテンツをキャッシュしておくことで、各視聴者と最も距離の近いサーバから処理を行い高速配信が実現できます。

セキュリティの向上

また、CDNを利用することでセキュリティの向上にも繋がります。

例えば、故意に大量のリクエストや巨大なデータを送り続けることによって、サーバにつなぐネットワークを飽和状態にしてしまい、アクセス遮断を起こすサイバー攻撃があります。これに対してCDNを利用すれば、オリジンサーバで攻撃を受けるよりも複数ある配信サーバに分散されるため、サービスがストップする可能性を軽減することができます。

動画配信プラットフォームにはCDNが付いているサービスも多いため、特に自分たちでCDNの設定を意識することなく利用できます。

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6. 動画配信ログの収集と分析

配信された動画が実際に何回視聴されたかやどのくらい効果があったかなど、気になる方も多いと思います。動画配信を利用したサービスを適切に運用するには、動画配信ログの収集と分析が欠かせません。主な動画配信ログの項目としては、以下のようなものがあります。

・再生回数
・平均再生時間
・視聴者維持率
・視聴ユーザー数
・再生時間帯
・広告設定時の広告表示回数やクリック数

動画配信ログの分析については再生回数ばかりに注目してしまいがちですが、平均再生時間や視聴者維持率などもチェックすることで、「動画の後半まで視聴されているか」「途中でどのくらいの人が離脱しているのか」などを知ることも可能になります。

再生回数では「どのくらいの方が視聴したのか」という「数」の指標がわかるのに対して、平均再生時間や視聴者維持率では「視聴者がどれだけ動画に満足したのか」という「質」の指標について分析することができます。

もし途中で多くの方が離脱している箇所があればその部分の映像をチェックし、動画の編集や次回以降の制作に役立てていきましょう。

7. 動画配信の流れを把握し、有効に動画を活用しよう

これまで「なんとなく」で動画配信サービスを運営されていた方も、今回の動画配信の流れについての解説で理解が深まったでしょうか。

システムの裏側でどういったことが起きているのかを知った上で各種動画配信サービスを利用すると、エンコードやプレイヤータグの設置など、実行されている各工程の意味を把握しやすくなると思います。そして同時に、それらの仕組みをより有効活用しやすくなるのではないでしょうか。

また、昨今では動画コンテンツだけではなく、動画広告も配信されています。

▼詳しくは…

基礎知識を身につけて、ぜひ動画配信サービスを賢く利用してください。

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