教育・資格系の動画活用について語る(後編)

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前編では、教育・資格系の分野において、動画活用の沿革や享受できるメリットについてご紹介しました。しかしながら、メリットばかりではないこともお伝えしなければなりません。

▼前編はこちら

後編では、デメリットの解消方法とより具体的な活用方法について、動画配信の機能を挙げながらお伝えします。

1. 動画活用によるデメリットと解消方法

しかし、動画を活用する場合、メリットばかりを受けられるわけではありません。

既存のビジネススタイルと比べて、動画配信の機能に関する問い合わせが届くこともあり、学習関連での利用では生徒に対して一定のITリテラシーを持ってサポートを行う必要があります。また、生徒側の通信環境によっては、安定した授業動画配信が難しい場合もあります。対面式と比べると、講師・生徒間で直接顔を合わせたコミュニケーションが減少するため、生徒のモチベーションがなかなか上がらないということにも繋がる可能性があります。さらには、即時性のあるQ&Aを求める生徒にとっては、一方的な授業動画配信ではもどかしい思いをするかもしれません。そして動画配信を行うにあたり、動画コンテンツ制作の手間への懸念もあります。しかしながら、動画配信が普及している今日では、そんなデメリットの解消を支援したり、動画活用のメリットをより広げる機能もあるのです。

・サポートセンター
動画配信プラットフォームを提供する多くの企業では、動画配信サービスを提供する企業を支援する専用のサポートセンターを有しています。生徒から受けた動画配信に関する疑問や困りごとがあれば、すぐに専門家に相談できます。

・ダウンロード配信
動画コンテンツ(ファイル)を事前に視聴デバイスへダウンロードしておくことで、オフライン再生が可能になり、通信環境に依存しない安定した授業の提供ができます。また、ダウンロード配信であれば、生徒側に発生する通信費も抑制できます。

・双方向ライブやシステム内SNS
直接顔を合わせる以外にも、インターネットを介して即時性のあるコミュニケーションを取ることができます。動画配信では視聴データを元に動画配信では生徒一人一人に対して、「学習が進んでいない」、「ログインしていない」などの学習データも確認できるため、進捗が芳しくない生徒に対して応援メールやフォローを入れることにより、モチベーション低下防止に繋げられます。

・動画制作ツール
近年では、個人ユーザーが動画配信を行うサービスも増えたため、動画コンテンツ制作がより容易に行えるツールが多くリリースされています。中には無料で使用できるツールもあり、動画コンテンツ制作は必ずしもプロに任せなければいけない、手間がかかるといった状況ではなくなりつつあります。

2. 対象に合わせた動画活用の実例

ここまで、教育・資格系の分野において、どのように動画が活用されているかをお伝えしました。しかし、実際に自社の提供サービスに動画を活用するとなると、自社サービスの提供対象に合わせた機能が必要になります。

対象に合わせた機能とは何なのか。ここでは、もう少し細かい実例を紹介したいと思います。

幼児向け

動画活用前後の状況

絵本・雑誌といった冊子やVHS・DVDといった映像ソフトが主流でした。動画配信を活用することにより、持ち運び時に嵩張る、自宅でしか視聴ができないなどの制限から脱却し、今ではスマートフォン・タブレットを利用した出先での視聴が可能になりました。

特徴的な機能

幼児向けの動画活用の特徴として、シンプルなプレイヤーのUI、視聴時間を制限するためのタイマー機能、幼児による誤操作を防止するためのチャイルドロック機能が挙げられます。

小中高生向け

動画活用前後の状況

教室を使用した対面式授業や通信衛星などを利用した遠隔授業が主流でした。動画活用により、場所や時間を気にせずに希望する授業を受けられ、巻き戻しや一時停止によって自身のペースで学習が進められるようになりました。

特徴的な機能

小中高向けの動画活用の特徴としては、スケジュールに沿ってライブとアーカイブの疑似ライブを編成して、夏期講習などの集中型授業として配信する機能やライブ配信中に講師に対して生徒が質問コメントを送信するためのチャット機能などと連携しやすいことが挙げられます。

大学生向け

動画活用前後の状況

コロナ渦の影響もありオンライン授業を取り入れている学校も増えてきました。動画活用により、スクーリングが不要になったり、授業のアーカイブ動画を視聴できるようになり、単位取得までのプロセスがオンラインで完結する大学も登場しています。

特徴的な機能

大学向けの動画活用の特徴として、授業動画視聴を徹底させるため、初回視聴時に早送りやシーク操作を制限するなどのプレイヤーUI制御や、授業内容を二次利用されないためのコンテンツ保護が挙げられます。

社会人向け

動画活用前後の状況

教室での授業やテキスト・問題集による自己学習が主流でした。動画活用により、自信のライフスタイルを維持しながら、通勤時間帯やちょっとした休憩時間での隙間学習が可能になりました。

特徴的な機能

社会人向けの動画活用の特徴として、学習時間短縮によく使用される倍速再生やすぐに学びたい項目からの再生が可能になるチャプター機能、通勤時間ではスマートフォンで視聴し在宅時間ではその続きをパソコンで視聴するなど、デバイスを跨いだ継続的な再生を可能にするしおり機能が挙げられます。

3. 動画活用も企業戦略の一つになり得る!

特に教育・資格系の分野においては、教育とテクノロジーを組み合わせてICT化を目指す「EdTech」と呼ばれる市場が発展してきており、野村総合研究所によるとその市場規模は2023年には約3,000億円に達する可能性があります。

【出典】野村総合研究所 EdTech市場の現状と課題 ─ 教育産業の変化と働き方改革に向けた活用 ─

今では授業動画を当たり前のように配信している企業も、当然ながら始めたばかりの頃は動画活用方法についての知見が少なく、動画配信プラットフォーム提供企業と連携しながら自社サービスを育てている事例もあります。

私も個人のことは然り、企業に属する一員として何か新しいことを提案したり始めるときは期待と不安を覚えます。だからこそ、「動画のことは全然分からない」「動画配信にかかる費用が心配」などと考えて動画活用の検討を止めてしまう前に、まず、プロフェッショナルに相談してみるのはいかがでしょうか?相談することで正しい情報を得られ、何より新しい発見や意外な事実が得られるかもしれません。

また、動画活用の検討にあたり、よく使用される専門用語についてはこちらの記事をご参照ください。

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